社内恋愛狂想曲
私はその勢いにまたさらに驚き、三島課長の首の後ろに回した手にギュッと力を込めて、見た目より筋肉質なその体にしがみついた。

「やだっ、ちょっと待って潤さん……!」

三島課長の胸に顔を埋めて小さくそう叫ぶと、三島課長はゆっくりと動きを止めた。

ホッとしてきつく閉じていた目を開くと、思っていたよりすぐそばに三島課長の顔があって、私をじっと見つめる三島課長と目が合った。

私はなぜか目がそらせず、無言で三島課長の目をじっと見つめ返してしまう。

「志織……」

三島課長は真剣な顔で私の名前を呟くと、ゆっくり顔を近づけた。

えっ?!何これ?!

婚約者のふりをするのにここまで必要?!

これ完全にアウトだよね?!

そう思っているのに、この流れと心の甘い疼きには逆らえなくて思わず目を閉じそうになった瞬間、三島課長のジャケットのポケットの中でスマホが鳴った。

瞬時に我に返った三島課長は、慌てて私をベンチに下ろし、私に背を向けてポケットの中から取り出したスマホを耳に当てる。

「はい、三島です。どうも、お世話になっております。はい、はい、その件でしたら来週に……」

どうやら仕事の電話のようだ。

仕事の電話に対応している三島課長の声を聞いていると、頭の中が冷静さを取り戻した。


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