社内恋愛狂想曲
翌朝は平日より少し遅い時間に起きて朝食を取り、バレーの練習に行くために昨日買ったばかりのジャージに着替えた。

ジャージなんて着るのは何年ぶりだろう?

少なくとも社会人になってからは初めてだと思う。

真新しいバレーシューズに靴紐を通していると、葉月からトークのメッセージが届いた。

葉月も婚約者候補のモナちゃんを見てみたいらしく、応援がてら練習を見学するそうだ。

【そんなこと言って、本当はダーリンの勇姿を見たいだけじゃないの?】

そう返信すると、【ちゃうわ!誰がダーリンやねん!】と瞬時に返信が届く。

おまけにふてぶてしいブタのキャラクターが「あっかんべー」をしているスタンプ付きだ。

伊藤くんのことが好きで好きでどうしようもないくせに、葉月はホント、素直じゃないな。

カッコ良くスパイクを決める伊藤くんの姿を目にしてうっとりする葉月の顔を思い浮かべると、思わず笑いがもれた。

持ち物をスポーツバッグに詰めて忘れ物がないか確認していると、今度は三島課長からメッセージが届いた。

【おはよう。30分後に迎えに行きます】

昨日の甘々のデートが嘘みたいに、なんとも事務的なメッセージだ。

だけど今後も同じ会社で働く上司と部下であることを考えると、他人が見ていないところではこれくらいの距離感がちょうどいいのだと思う。

とりあえず今日は、みんなの前で三島課長に婚約者だと紹介されても恥ずかしくないように振る舞おう。


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