社内恋愛狂想曲
三島課長と手を繋いで歩いたとか、三島課長の予想外の甘さにドキドキしたとか、うっかりキスしそうになったとか、そういうことは言わないけれど、またリアルに思い出して赤面しそうになる。

私は慌ててそれをごまかそうと、キャベツの向こうの人参に手を伸ばした。

「ふーん……。じゃあゆうべの潤さんのあの落ち込みようはなんだったのかな」

瀧内くんは人参を手に取って眺めながら呟いた。

「……三島課長が落ち込んでたの?なんで?」

「さぁ……。明日志織さんが口きいてくれなかったらどうしようって、ブツブツ言ってました」

……それはつまり、あのことか。

今朝は何も言わなかったけど、三島課長も気にしていたらしい。

だから緊張していたように見えたのかも知れない。

私に思い当たる節があることを察したのか、瀧内くんは横目でちらっと私を見ながら、また勝手に人参をかごに入れる。

「何か気まずくなるようなことでもあったんですか?」

「ないない!ホントになんにもないよ!」

「ふーん……まぁ、お互い大人なんだから、別にあってもいいんですけどね」

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