社内恋愛狂想曲
……また結婚を急かされるのかな。

正直言って気が重いけれど、もし急な用だったらと思うと無視はできない。

私はひとつため息をついて通話ボタンをタップした。

母は珠理の結婚式に着ていく服はどうするのとか、前日の晩は実家に泊まって、当日一緒に式場に行こうとか、もう少し先でもいいような話をした。

これで用件は全部済んだかと思って私が電話を切る方向に話を持っていこうとすると、母は「そういえば」とわざとらしく前置きをした。

『昨日シーサイドガーデンで一緒にいた男の人は、どういう方なの?』

私の予想を遥かに上回ることを言われ、頭が真っ白になった。

男の人と一緒だったことはおろか、シーサイドガーデンに行ったことすら母には一言も話していないのに、なぜそれを知っているの?

「人違いでは……」

『私が見間違えるわけないでしょう。いい雰囲気だったから邪魔したら悪いと思って声かけなかっただけよ。スポーツ用品店を出てガーデンエリアの方に歩いて行ったわよね?』

中村さんの店を出て海辺の散歩へ向かうところを見られたのか!

……ということは、私と三島課長が手を繋いでいたのも見られてるんだ!!

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