社内恋愛狂想曲
「いいんです、全然気にしてませんから」

私が少し笑ってそう答えると、三島課長は険しい顔をしてため息をついた。

「これ、お土産。さっき渡しそびれたから」

三島課長はお土産の入った紙袋を差し出した。

受け取ると紙袋はずっしりと重かった。

「わざわざすみません……。こんなにたくさん、ありがとうございます」

「全然気にしなくていいよ。俺がしたくてしただけだから」

その言葉はいつもと違ってつっけんどんで、どことなくトゲがあるように感じた。

私は何か気に障るようなことを言っただろうか?

「志織が無事に帰って来たことも確認できたことだし……お土産も渡したから、そろそろ帰るよ」

「はい、ありがとうございました」

私がお礼を言って軽く頭を下げると、三島課長は私の頭を撫でようとした手を止めた。

「やっぱり志織は……全然気にしてないって言うんだな」

「えっ……?」

「いや、なんでもない。おやすみ、早く寝ろよ」

ポンポンと私の頭を軽く叩いて、三島課長は私に背を向ける。

三島課長の何か言いたげな様子が気になったけれど、私はあえて引き留めることはしなかった。



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