社内恋愛狂想曲
「今日は元気ないのね。簡単な仕事で初歩的なミスしたり、奥田さんらしくないっていうか……。何か悩みごとでも?」

私がコンビニのおにぎりの包みを開けながら尋ねると、奥田さんは卵焼きを一口かじってため息をついた。

「佐野主任、彼氏さんとはうまくいってますか?」

単刀直入な一言にドキッとして、手に持っていたおにぎりを思わず落としそうになった。

「えっ……?!なに?突然どうしたの?」

「彼……この間までは毎日のように私のところに来てくれたのに、最近全然来てくれないんです」

「へぇー……そうなんだ……」

白々しくそう言っておにぎりにかじりつく。

私はその原因を知っているけど、ここで話してしまっていいものだろうか?

奥田さんは何がなんでも私から護を奪うと意気込んでいたけれど、護は私を会長の孫だと勘違いして利用しようとしているだけで、私自身のことは料理以外好きでもなんでもない。

しかも元カノとの不倫がその人の旦那さんにバレて泥沼まっしぐらだし、奥田さんのことは完全に体だけが目当てで、彼女面されて面倒だから切り捨てようとしているとは、いくらなんでも本人を目の前にしては言いづらい。

< 442 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop