社内恋愛狂想曲
「ん?料理の話。葉月は彼氏にごはん作ってあげたりするの?」

「たまには作るけどな、残したら許さん」

葉月らしい返しに伊藤くんが思わず吹き出した。

「彼氏は苦手なものでも食べてくれる?」

「だいたいの好き嫌いは把握してるから、相手が苦手なもんは滅多に作らんけど……前に苦手やって知らんと作ったときは、黙って食べてたで。食べ終わってから、実は嫌いやって言うてたな」

嫌いなものでも葉月が作った料理なら黙って残さず食べるなんて、伊藤くんは本当に葉月のことが好きなんだなと、思わずニヤニヤしてしまう。

「嫌いなものも残さず食べてくれるなんて優しい彼氏だね。でも奥田さんは頑張って作ったのに一口も食べてもらえなかったんだよね」

「……はい、まぁ……」

「一口も食べんかったん?それはひどいな!瀧内くんやったらどうする?」

葉月に話を振られた瀧内くんは、こちらは見ずに焼きそばを頬張る。

「食べますよ、好きな人の作ったものならなんでも」

「だよねぇ。全部は無理でも、少しくらいは食べないと作った人に失礼だよね。奥田さん、そんな人やめちゃえば?」

奥田さんは苦笑いを浮かべながら、ついさっき運ばれてきたばかりの桃のチューハイを飲む。


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