社内恋愛狂想曲
そのひどい人がすぐ隣にいるとは、さすがに言えないと思っているんだろう。

「志織は彼氏にしょっちゅう料理作ってるんやろ?」

「うん、私も作るけど、彼も作ってくれる。すごく上手だよ。朝ごはんに作ってくれる卵焼きがもう絶品で……」

私が唐揚げに手を伸ばしながら答えると、護は怪訝な顔をして私の方を見たけれど、私はそれに気付かないふりをした。

「結婚の話は進んでるん?」

「ぼちぼちかな、まだ具体的には決まってないけど、私には和装が似合いそうだから神前式がいいなとか。そうそう、この間彼の両親に偶然会って、挨拶だけはした」

護はさらにわけがわからないと言いたげな顔をしている。

だけどすぐ隣に奥田さんもいるし、私との付き合いは社内では一応秘密になっているから、何か言いたくても言えないんだろう。

この辺で軽く護をいじっておこうか。

「そういえば噂で聞いたけど、橋口くんは会長のお孫さんと付き合ってるんでしょ?」

私が尋ねると、護は驚いた様子でこちらに顔を向けた。

会長の孫だと思って付き合っているはずの私にそんなことを言われたのだから、かなり焦っているに違いない。

「いつの間にそんなすごい子つかまえたの?もしかして将来は逆玉の輿に乗って幹部とか?出世コース間違いなしだね」

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