社内恋愛狂想曲
私が笑いながらそう言うと、護は何も言葉が出ない様子で、しきりにまばたきをくりかえした。

「あれ?でも橋口先輩はあの人と付き合ってるんじゃなかったんですか?」

瀧内くんがしれっとした顔で尋ねると、葉月が食い気味に身を乗り出す。

「あの人って誰?」

「あじさい堂の担当者で、それが人妻なんですけどすごい美人なんですよ。確か元カノなんですよね?仕事の後とか休みの日に二人でいるところをしょっちゅう見かけるから、てっきりよりが戻ったんだとばかり思ってました」

護が不倫していることをみんなの前でさらっと言ってしまうなんて、本当に瀧内くんは恐ろしい。

すると伊藤くんもうずうずした様子で話に加わる。

「そうなのか?俺は前の彼女とは別れて、あの子と付き合ってるんだと思ってた。合コンで婚約者とのこと相談されて、いい感じになって送っていったんだよな。商品管理部の山村さんだっけ?ホントに橋口はモテるなぁ」

「えっ、新人ちゃんと?」

ここに来て新人ちゃんの名前が出てきたことには私もかなり驚いた。

そうか、伊藤くんも参加した合コンで護が送っていった商品管理部の若い女の子って、新人ちゃんのことだったんだ。

もしかして新人ちゃんのお腹の子の父親は護なんじゃないかと冷や汗がにじむ。


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