社内恋愛狂想曲
「佐野主任、そういえば山村さん、最近出社してませんけど……どうかしたんですか?

新人ちゃんが妊娠して退社することは来週みんなに報告することになっているから、まだそれを知らない奥田さんは心配そうに私に尋ねた。

歳が近いこともあって、奥田さんは新人ちゃんとはわりと仲良くしていたようだから、彼女が会社に来なくなったことが気になっていたのだろう。

「うーん……。みんなには来週報告することになってるんだけど……新人ちゃん、会社辞めたの」

「えっ、辞めたんですか?結婚するまでは続けるって言ってたのに……」

「ここだけの話だけど……行きずりの人の赤ちゃんができて、婚約は破棄されたんだって」

奥田さんは衝撃の事実に呆然としている。

護は心当たりがあるのか、下を向いたまま微動だにしない。

「じゃあ、お腹の子の父親と結婚するんですか?」

「いや、新人ちゃんは酔ってたから父親が誰なのか覚えてないって言ってるんだって。未婚で産んで親の助けを借りて育てるらしいよ。でも社内の人間だってことだけは無理やり白状させられたみたいで、新人ちゃんのお父さんが必死になってお腹の子の父親探してる。新人ちゃんのお父さんは重役だから、もし見つかったらただじゃ済まないだろうね」

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