社内恋愛狂想曲
「好きでもない相手に色目を使われて触られるのが苦手で、逆に好きな人と、絶対に恋愛の対象になり得ない相手なら触れても触れられても平気ってことです」

「そうなんだね……」

ということは、好きな人がいる三島課長にとって私は恋愛の対象になり得ないから、手を繋いだり抱きかかえたりしても平気ということだろうか。

何気なく触れて過呼吸を起こされるのも困るけど、なんとも思われていないのは悲しい。

なんとも思っていない私に触れても平気なのは営業部にいた頃のスキンシップで実証済みだから、婚約者の役を私に頼んだのかも知れない。


しばらくお酒を飲んだあと店を出た。

「次の練習は日曜日か。何時からだっけ?」

「先週と同じ時間です」

駅に向かいながらそんな会話を交わしていると、瀧内くんのスマホが鳴った。

瀧内くんは電話を終えると、「おばあちゃんの家に泊まりに行くことになりました」と言って会社に戻った。

葉月と伊藤くんはスーパーで明日の朝食を買って帰ると言ったので、駅前で別れた。
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