社内恋愛狂想曲
午前中のこんな明るいうちから私に目を閉じさせてどうするつもりだとか、今度こそ未遂じゃ済まなくなるかも知れないなどと考えてさらに焦り、気持ちは後ずさるけれど、私の体はシートベルトでしっかり固定されている。

「いいから目を閉じて」

また目を閉じるように促され、もうどうにでもなれと心臓をバクバクさせながらギュッと目を閉じると、三島課長の指先が私の左目のすぐ下の辺りにそっと触れた。

「はい、取れた。もういいよ」

……ん?取れたって何が?

肩透かしを食わされた気分で目を開くと、三島課長はすでに前を向いてハンドルを握っていた。

三島課長はなにごともなかったかのようにゆっくりと車を発進させる。

「あの……何かついてました?」

「ああ、うん。まつ毛がついてた」

「あ……なんだ、まつ毛……」

自分でそう言っておきながら、そんなことを言ったら期待を裏切られたと言っているみたいだと気付き、恥ずかしさで顔から火が出そうになる。

「口で説明するより俺が取った方が早いかと思ったんだけど……」

「そ……そうですね……ありがとうございます……」

やっぱり私は欲求不満でおかしくなってしまったのか?
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