社内恋愛狂想曲
なんだろうと思いながら足をどけて手を伸ばし、シートに隠れた辺りを何気なく探ると、小さな固いものが指先に触れた。

拾い上げてみると、それは大粒のダイヤのあしらわれたイヤリングだった。

私はイヤリングなんてしないからわからないけど、そんなに簡単に外れるんだろうか?

そして外れてしまっても気付かないものなの?

それにしても高そうなイヤリングだ。

これがここにあるということは、この車の助手席に女性が座っていたということだ。

よくわからない感情が込み上げて、少し胸がモヤッとした。

どんな女性が落として行ったのだろうなどと考えていると、スマホから女の人の高い声が微かにもれ聞こえた。

電話の相手が女性なのだとわかると、思わず眉間に少しシワが寄ってしまう。

これはもしかして嫉妬というやつか?

いやいや……女性といったって、身内の方や仕事の同僚や関係者などがいるではないか。

このイヤリングだって、おそらく高価なものだから、三島課長のお父さんの再婚相手のゆうこさんを乗せたときに落としてしまったという可能性もある。

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