社内恋愛狂想曲
「ちょっと待った……。ホントにそれだけ?」

これ以上何を言えばいいの?

玉砕するとわかっている戦に挑む勇気なんて、私にはこれっぽっちもないというのに。

「……そうですよ。三島課長からいただいたお土産が、私の好きなものばかりだったって話をしたかっただけです」

狼煙をあげる前に意気消沈してしぼんでしまった気持ちをなんとか隠そうとしたけれど、カラ元気を使い果たしてしまった私の声は、 思いのほか重苦しかった。

早く一人になりたいのに、三島課長は私の腕をつかんだまま離してくれない。

「喜んでもらえたのは嬉しいけど……なんだ、期待して損したな」

三島課長にはあの人がいるのに、私に何を期待していたって言うんだろう?

やっぱり私に期待するのは料理だけ?

それとも偽物でも婚約者なんだから、今夜はそれらしいことをしようかって?

これ以上思わせぶりなことを言われると、八つ当たりに近い言葉を投げつけてしまいそうだ。

「もったいぶってたわりにどうでもいい話ですみません。あと、これ……」

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