社内恋愛狂想曲
「それはさておき、今日は人事異動があるからバタバタすると思うけど、しっかり頼むよ。あと、これ配っといて」

「はい、わかりました」

有田課長から受け取った社報を、まだ出社している人もまばらなオフィスのデスクに配り終え、一息つこうと席に着いた。

すっかり冷めてしまったコーヒーを飲みながら社報を広げると、新商品の売り込み戦略だとか、各部署で頑張っている新人の業務日記などの記事の後ろの方に、今回の人事異動の詳細が掲載されている。

ずらっと並んだ異動する社員の名前を何気なく眺めていると、営業部の欄に見つけたその名前にドキッとした。

“営業部 営業二課 課長補佐 下坂芽衣子”

これはもしかして、あの人の名前では……。

営業二課というのはかつて私も所属していた、三島課長の所属している課だ。

ほとんどの課には課長補佐なんてつかないけれど、業績が著しく伸びて課長業務が多忙になると、稀にその役職の人が配属されるらしい。

営業二課の業績が非常に良いというのは社内でも評判にはなっていたけれど、まさか三島課長の補佐にあの人がつくことになるとは思わなかった。

ということは、これから三島課長とあの人は職場で毎日顔を合わせ、かなり密に連絡を取り合ったり行動を共にしたりすることになるのだ。

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