社内恋愛狂想曲
「三島課長から直接聞いたんじゃなくて、その相手から聞いたの。後輩として三島課長と二人で食事するくらいは目をつぶるけど、それ以上の関係になられるのは困るって言われたから、誤解されると困るしもう二人だけで会ったりするのはやめた方がいいかなって」

瀧内くんはチョコレートをひとつ口に入れ、あごに手をあてて何か考えるそぶりを見せた。

「その相手というのは……」

「ん?下坂課長補佐。いろいろあって他の人と結婚したけど、本当は三島課長のことが好きだったって。三島課長も下坂課長補佐のことがずっと好きだったから、その件に関しては許したらしいよ」

言ってしまってから、少ししゃべりすぎたかなと思ったけど、“覆水盆に帰らず”だ。

瀧内くんは思いきり顔をしかめて嫌悪感を露にしている。

「またあの女か……」

そうだった。

瀧内くんは下坂課長補佐のことが嫌いなんだ。

兄のように慕っている三島課長が、自分の嫌いな下坂課長補佐と結婚するなんて、瀧内くんにとっては許せないのかも知れない。

「そのこと潤さんには話したんですか?」

「言ってないよ。確かに下坂課長補佐から三島課長と結婚するって聞いて、もうやめようって決心がついたんだけど……私には私なりの理由があったから、それだけ伝えた」

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