社内恋愛狂想曲
「それで佐野主任がどんな答えを出しても僕は止めません。一緒にいて幸せだと思える相手を選ぶべきだと思いますから」

「うん……そうだね。そうする」

瀧内くんの言う通りだと思いながら、私もコーヒーを飲み干す。

もしかして瀧内くんは私よりずっと恋愛経験が豊富なんだろうか?

普通に考えて、元上司の恋愛のゴタゴタに自ら関わる物好きなんてなかなかいないと思う。

瀧内くんには私のこの状況を黙って見過ごせない何らかの理由があるのかも知れない。



朝礼が始まる直前、奥田さんが急いでオフィスに駆け込んだ。

「ギリギリ間に合ったー!」

いつものことだけど、もう少し余裕を持って出社できないものだろうか?

もしかしたら朝まで護と一緒だったのかも知れない。

思わず護と奥田さんが裸で抱き合うシーンを想像してしまい、ギリッと奥歯を噛み締めた。

私がなんにも知らないと思って、護は私に嘘をついて奥田さんを抱いている。

奥田さんは護に抱かれながら“彼女のくせに護に愛されていない女”を馬鹿にしてるんだろう。

特別好きでもないくせに、遊びなんかで私の護に触れないで。

悔しくて胸の奥がモヤモヤして、吐き気がしそうなほどの不快感が込み上げた。


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