社内恋愛狂想曲
私が病室を訪れたとき、千絵ちゃんは赤ちゃんのオムツを替えていた。

さすが3人目にもなると手慣れたものだと、その手際の良さに妙に感心する。

「おめでとう。元気そうで良かった」

「ありがとう、早速来てくれたんだ。さっき授乳が終わったところで機嫌いいから、抱っこしてやって」

千絵ちゃんは手を洗って消毒すると私にも同じようにするよう促して、優しい手つきで抱き上げた赤ちゃんを、清潔になった私の手にそっと抱かせた。

昨日生まれたばかりの赤ちゃんは小さくて温かくて、どこもかしこもやわらかくてフニャフニャでとても可愛くて、ずっとこうして抱いていたいような、でも壊してしまわないかと不安でやっぱり怖いような気もする。

そんな不安が伝わったのか、それとも赤ちゃんに慣れていない私の抱っこがあまりにもぎこちなかったのか、赤ちゃんがぐずり始めたと思うと一気に大泣きしてしまったので、慌てて千絵ちゃんにバトンタッチする。

千絵ちゃんに抱かれて安心した赤ちゃんはあっという間に泣き止んで、気持ち良さそうに眠ってしまった。

「さすがお母さんだね」

「そうね。でも私だって初めて出産したときは抱っこもオムツ替えもへたくそだったよ。何をしても泣き止まないからどうしていいかわからなくて、涼香と一緒になって泣いたこともある」

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