社内恋愛狂想曲
「志織の性格考えたら、何も考えずに一緒にいられるとは思えないし、俺のせいで志織に悩んだり苦しんだりして欲しくないから……全部、なかったことにしてしまおうか」




あれから何時間経ったのだろう。

私は真っ暗な部屋の中でぼんやりとベッドに横たわり、一人で涙を流し続けている。

潤さんが「全部なかったことにしてしまおうか」と言ったとき、私は“いやだ”と即答することができなかった。

潤さんと別れたいなんて思っていないけれど、待たせるだけ待たせておいて結婚を決断できなければ、結果的に潤さんを悲しませてしまうと思うと、何も答えられなかったのだ。

何も言えずにいる私の手を離し、「こんなに志織を悩ませるなら、好きだなんて言わなきゃ良かった。ごめんな」と言い残して潤さんは去っていった。

私はその背中を追うこともできず、ただ呆然と立ち尽くしていた。

潤さんの震えた声が耳の奥に残り、大きな壁に立ち向かう勇気のない私を責め立てる。

ゆうべはお互いを想う気持ちを伝え合って、あんなに幸せな気持ちで潤さんの腕の中にいたのに、たったの数時間でこんなことになるとは思ってもみなかった。

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