社内恋愛狂想曲
会社の最寄り駅に着いた頃には日が傾き始めていた。

プラットホームの時計の針は、4時を少しまわったところを指している。

会社に戻ったら帰社報告をして、出張中の資料をまとめておかなければならないので、遅くまで残業することになるだろう。

私の体は自宅に帰りつくまで持つだろうか。

ずっしりと重い荷物を肩に掛け、寝不足と疲労でフラフラになりながら駅のホームを歩く。

改札へ向かう階段を下りようとしたとき、強く射し込んでくる西陽の眩しさにめまいがした。

一瞬目の前が真っ白になったかと思うと、頭から血の気が引き、次の瞬間には視界が真っ暗になる。

身体中の力が抜け、自分の体重が支えきれなくなった足がふらついた瞬間、電車から降りた乗客の波に押され、私の体は前のめりに倒れる。

一瞬宙に浮いた体は重力に抗う暇もなく、そのまま長い階段を転げ落ちた。

周囲からあがった悲鳴がやけに遠くに聞こえた。


薄れていく意識の中で、悲しそうにうつむいた潤さんが“俺のこと、きらいになった?”と問い掛けた。


潤さん、大好き。

大好きだから、離れたくない。

ずっと一緒にいたいの。




< 715 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop