社内恋愛狂想曲
「カッコ悪いプロポーズだなぁ……」

「でもきっと何年経ってもずっと忘れないと思う」

「それならまぁいいか」

潤さんはベッドにもたれて、私の頭を優しく撫でる。

「事故にあって死ぬかもって思った瞬間に、志織の泣きそうな顔が浮かんだんだ。死ぬ前にもう一度会って謝りたいなとか、もっと一緒にいたかったなとか、俺の手で志織を幸せにしたかったなぁって」

人間が死を覚悟した瞬間に、心残りなことや大切な思い出が走馬灯のように蘇るというけれど、潤さんの脳裏をよぎったのは私のことだらけだったようだ。

そんなにも私のことを想ってくれていたのだと知って、嬉しさのあまり口元がゆるむ。

「病院のベッドの上で目が覚めたとき、せっかく命拾いしたんだからもう一度志織に好きだって言って、何年かかっても志織の気持ちを取り戻して、今度こそ絶対に志織を幸せにしようって思った」

「ありがとう……すごく嬉しい……」

後悔するばかりでなく、潤さんが前向きに私との未来を考えてくれていたのだと思うと嬉しくて、今度は涙が溢れた。

潤さんは私の涙を指先で拭って笑みを浮かべる。

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