社内恋愛狂想曲
「なんじゃそりゃ……。バレンタインじゃあるまいし……」

今どき学生でもそんな回りくどいことはせずストレートに告白するだろうに、毎日同じことのくりかえしで退屈なのか、会社というせまい世界の中では子どものような恋の駆け引きが常識化しているらしい。

「あと、ひとつのプリンを一緒に食べるのと、お互いに買ったプリンを交換して食べるんは“私たちはカップルですよ”ていうことなんやて。まぁ、ただの同僚やったら普通はせんわな」

「くだらない……」

あまりのくだらなさと幼稚さにため息がもれる。

たかがプリンひとつで身に覚えのない噂を流されたのだと思うと、若い子たちの想像力……いや、妄想力はどこまで豊かなんだと呆れてしまう。

「ところでなんで三島課長からプリンもらわんかったん?」

「私はそんなの知らなかったけど……1回目は話の途中で下坂課長補佐が来てそれどころじゃなくて……」

あのときは潤さんが元カノの下坂課長補佐を今でも好きなのだと勘違いしていたし、前日の車の中で起こったことが気になっていたからその場にいられなくて、プリンを譲って欲しいと言う下坂課長補佐にあげたらどうかと言って断ったと話すと、葉月はニヤニヤし始めた。

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