社内恋愛狂想曲
「1回目いうことは2回目もあるん?」

「2回目はちょうどプリンを食べたところだったし、もうお腹いっぱいで」

寝過ごして出社したあの日、有田課長から缶コーヒーをもらったら“お返しは社食のプリンでいい”と見返りを要求され、運良く買えたプリンを献上すると“これ食べて元気出せ”と返品された。

何も考えず美味しく食べ終わったあとに潤さんがプリンを渡そうとしてくれたけど、お腹がいっぱいだからと断り、そのときもプリン好きな下坂課長補佐にあげたらどうかと言ったら、潤さんは“自分で食べるからいい”と言った。

「そういえばあのとき、潤さんが言ってたな。“また先を越された”とか、“ホントに俺はタイミングが悪いな”とか……。なんのことだろうって思ったんだけど……」

「そらアレやで」

アレってなんだ?

関西人の癖なのか、葉月はよく大雑把に“アレ”で話を片付ける。

いつもは話の流れでだいたいの意味がわかるけど、この話に関しては“アレ”がなんなのかさっぱりわからない。

「アレって?」

「アレはアレやん?」

「さっぱりわからないんだけど……」

「ほな、三島課長に聞いてみ」


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