社内恋愛狂想曲
「……伊藤くんが異動になる前、私と……」

「ああ……俺と佐野が噂になってたってやつか。あれはちょっと彼女の反応を見てみたかったというか」

そんなことをして一体誰が得をするんだろう?

伊藤くんの考えていることが本当にわからない。

「何それ?彼女とはもう終わったんでしょ?私と伊藤くんが昔噂になったことなんて誰も興味ないと思うけど」

「そうでもなかったぞ?彼女とは別のやつらが反応した」

そう言って伊藤くんは思いだし笑いを浮かべた。

何か良からぬことを考えている顔をしている。

「やらしい笑い方しないでよ」

「今度は佐野にプロポーズしたって言ってみようかな」

さっきのあれがプロポーズだなんて冗談じゃない!

あんな軽くて適当でもののついでみたいな、例えて言うなら職場の同僚に“お菓子まだたくさんあるからこっちで一緒に食べませんか”みたいなノリのプロポーズがあってたまるか!

いや、あったとしてもそんなの私は許せない。

「……結婚をなんだと思ってんの? そういうのを悪ふざけっていうんだよ 」

「悪ふざけじゃなかったら俺と結婚する?」

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