社内恋愛狂想曲
ため息をつきながら駅まで歩き、時計を見上げる。

そして次に時刻表を見て、もう一度時計を見たり自分のスマホの時計を見たりして時間を確かめた。

「もう……ホント最悪……」

伊藤くんに振り回された結果、大幅なタイムロスをしてしまい、この駅で乗り換えるはずの最終電車を逃してしまった。

しばし呆然と立ち尽くした後、大きなため息をつきながらタクシー乗り場に向かって歩き出す。

こんなことなら伊藤くんを送って泊めてもらえば良かったかな。

本当にそうしていたとしても、ただ余ってる部屋を借りて朝まで眠るだけのつもりだけど、それだけで済む保証なんてどこにもない。

大人の男女がお酒に酔った勢いで一夜を共にして体の関係を持つなんて、世間ではよくあることだろう。

だけどもし私と伊藤くんの間に何かが起こったとしても、護だって私に嘘をついて浮気しているんだし、文句は言えないと思う。

護はきっと最初から土曜の夜には出張から帰れることがわかっていたくせに、「帰りは日曜の夜になる」と嘘をついたんだろう。

そんなに私と会うより大事な用があるのか、それとも私にはもう会いたくないのか。

今この状態で言えることは、離れてしまった心と過ぎた時間は戻らないということ。

そして、なくした信用は二度と取り戻せないということだ。


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