社内恋愛狂想曲
伊藤くんが食器をすすぎながらそう言うと、玲司くんはすすぎ終わった食器を布巾で拭きながらしれっとした顔で答える。

「志岐くんと葉月さんが喧嘩してたからでしょう」

3人はキッチンで後片付けをしながら、この際だからみんなまとめて結婚のお祝いをしようとか、お祝いの料理は何にしようかと楽しそうに話し始めた。

私と潤さんはソファーに座り、こっそり手を繋いで3人の会話を笑いながら聞いている。

「あいつらといると退屈してる暇もないな」

「みんなを驚かせようと思ったのに、逆に驚かされちゃったね」

「でもそうか……。当たり前みたいにずっと一緒にいたけど、みんなそれぞれの道を行くんだな」

潤さんは少し寂しそうに呟いて、小さなため息をついた。

私は潤さんの手をギュッと握る。

「進む道が別々になっても、みんなちゃんと繋がってるから大丈夫。それに私はずっと潤さんのそばにいるよ」

「うん……そうだな」

もうしばらく経つとそれぞれの道を進み、こんな風にみんなで集まることはなかなかできなくなるかも知れない。

だから私は、掛け替えのない仲間たちとの今のこのときを大事にしたいと思う。



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