出逢えたのはーーー奇跡。
「でも、俺ゆめのことなんにも知らない。

ゆめの家族のことも……」


"家族"。

切りだしていいか悩んだ。


ゆめの病気のことも、何故そうなったかも俺は、何一つ知らない。

切りだすのが、怖かった。


傷つけたくなかった。



「先生、私ね………私が両親を殺したのーー」




"ゆめ、危ない!!!"



"ゆめ、ママ!!"


ママと、パパの声。


車のクラクションの音。


鈍い接触音。


覆い被さるママと、パパの下敷きになっていた私。


地面に広がる赤い海。



「ママーー?パパーーー?」


そして、小さな私。


まだ、五つの時だった。


< 54 / 247 >

この作品をシェア

pagetop