君との恋は、甘いだとか
「…」
中学最後の、体育祭が終わった。
もし優勝したら、
告白しようって、決めていた。
ナナちゃんの男友達に、
彼を呼び出してもらった、
体育館横の、
あまり人が使わない方の水飲み場で。
君は来た。
たしかに、君は来てくれたの。
でもわたしは、実はわたしが君を呼び出したんだって言い出せなくて、ずっと、来るはずのない男友達を二人で待っていたね。
あの日は、太陽がジリジリ照りつけていて、
日焼けした肌がヒリヒリしていて、
汗で乱れた髪を見られたくなくて、
ずっと自分のスニーカーを見ているわたしに、君の顔は見えてなかった。
「…」
何も喋らないまま時間は過ぎた。
あぁ、早く、早く何か喋らないとって
焦っても焦っても言葉は出てこなかった。
「「…」」
2人分の沈黙。
でも、不思議と心地よかった。
ずっとこのまま、このままでいれたらなって、跳ねる心臓とは裏腹に、頭の中では呑気なことを考えていて。
実は君も、わたしとおんなじ気持ちでいるんじゃないかって、思ってたの。