君との恋は、甘いだとか
不思議と、びっくりはしなかった。
変にキョドることもなく、至って自然に
「ひさしぶり」
わたしはそう返事ができた。
中学生の頃、夢にまで見た君がそこにいる。
付き合いたいと口では言えなくとも、
夢の中では何十回も想像してたの。
君の彼女になれたらって。
でもわたしの想像はいつもそこまでで、
付き合ってから何をしようとか
そこまでの想像が追いつかなくて。
とても純情だった。
純粋で、とても綺麗だった。
あの時の感情を
綺麗なままちゃんととっておけていたら。
「二人ともすっかり変わったね」
時の流れは、残酷だ。
「はは、ありがとー!九郎くんもめちゃくちゃ変わったよねー、背こーーんなにちっちゃかったのにね!」
ナナちゃんは、さすがの明るさで臨機応変に九郎くんと会話している。わたしには、それがなんだか他人事のように感じていた。
スピーカー越しに聞いているような、感覚。
「そうなんだよな、高校生からぐんと伸びてさ。今は180くらいあるよ」
「まじか、すごいな!高身長の仲間入りじゃん!」
あぁ、あぁ。
ドキドキしろ、わたし。
あんなに好きだった人が目の前にいるのに。
思い出の中よりもうんとかっこよくなって
せっかく話しかけてくれているのに。
「沙樹さんも、振袖似合ってるね」
あの時の君が、わたしを、
褒めてくれてるのに。
「はは…ありがとう。九郎くんも、スーツ似合ってるよ」
…ドキドキしろ、わたし。