君との恋は、甘いだとか
それから九郎くんとは、少しだけ話をした。
お互い、今は大学生であること。
(ナナちゃんはケーキ屋で働いているけれど)
中学のときの先生と、さっき会ったこと。
この後の同窓会の話。
それだけ話すと、いい感じに九郎くんが話を切り上げて、「じゃ、また後で」と笑って彼は人混みに消えて行った。
しばらくして、
他の女の子たちと話す九郎くんが見えた。
「ああしてみんなに挨拶しに回ってるんだね、九郎くん。律儀だなぁ」
「そうだね。さすが人気者…」
「沙樹、今はもう九郎くん好きじゃないの?」
「え?…うーん、そうだね。昔の話だし。もう5年も前だよ」
「ふーん、ま、同窓会も楽しもうね!」
「うん」
時の流れは残酷だ。
あんなに好きだった気持ちも色褪せて、
終いには何も感じなくなってしまうなんて。
でも、それも当然だ。
わたしには、今彼氏がいる。
その彼氏が今はとても好きだから。
一度に、二人も
好きになれるほど、わたしは器用じゃない。
そこは、変わってない。