君との恋は、甘いだとか

怖い話



蝉の鳴く声が聞こえる。


開けた窓から吹き込む風が、
教室のカーテンを揺らしている。


放課後、少しだけ薄暗くなった教室で


わたしは確かに、
九郎くんと一緒にいた。


何かの授業の補習を受けていて、

配布されたプリントを書き終えた人から帰っていいと言われていたのに、わたしはなんだかんだナナちゃんと話が盛り上がっているふりをして、とっくの昔にプリントなんて終わっていたのにずっと教室に居残っていた。

九郎くんは、プリントが面倒くさくなったみたいで居眠りをしていた。


そんな彼を視界の隅にチラチラと納めながら、時計の針はどんどん進んでいき



「もう遅いから、終わってないところは家でやってきてもらって、明日の朝提出することにします」



先生がそう言って補習を切り上げた。


「ふー、疲れた」なんて言いながら、九郎くんは白紙のプリントを机の中にしまった。


「ふふ」


思わず笑ってしまう。


ーー結局、ずっと寝てたんだ…。それに、家でやってくるつもりもないみたい


九郎くんの、そういうところが好きだった。


だらしなくて、面倒くさがりで、お調子者だけど、でもやるときはちゃんとやる。そんなところが。



「先生先生、この話知ってます?学校の怪談なんですけど…」



わたしとナナちゃん、九郎くん、先生の四人しかいない薄暗い教室で、ナナちゃんが突然怖い話をし始めた。

学校の会談から、ネットで見た話まで。

怖い話が苦手なわたしは、ずっとキャーキャー言いながら机の下に隠れたり、ナナちゃんに抱きついたりしていた。

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