ドワリとインスタグラム

ドワリ男が、帰ってから急いで同業の私が尊敬する先輩の心療内科の男に電話した。

「最近の症例でドワリって聞いた事がある?ドワリよ!やっぱり無いかあ。

それなら良いです。え!別に男関係で悩んだりしてないですよ。」

女も三十代で離婚してると何かにつけて男関係で悩んでると思われるのか?と少し腹が立ったが、次の患者を招き入れる。

またもや、初診の患者で年齢は八十代を越える男性だった。

入って来るなりその老人は言った。

「先生、私この歳で精神科にお世話になるなんて恥ですよ。

ところで、先生ドワリで悩んでるですが分かりますか?ドワリについて?」

老人は、椅子にも座らずに私をじっと見たが諦めたように笑った。

帰りますと言うと私が止めるのも聞かずに老人とは思えない早さで部屋を出ていった。

私は、うちは心療内科ですと言ってやりたかったが、諦めた。

またもや、ドワリかと思うと何かの感染症がこの辺を流行り出したのかとも思えた。

しかし、次の患者は迎えてそれは違う事が分かった。

少なくともこの辺だけでは無いようだったのだ。

次の患者は、陽気になっているのに厚いコートを着てフラフラしながら入って来た。

年齢は、多分二十代の前半だろう。

若い男の顔色は、相当悪かった。

「先生名古屋から逃げて来ました。

ここならもしかしたらドワリが分かるのかもと思ってね。

それに、ドワリが分かれば病院に行きますよ。刺されたのは、ドワリとは関係ないです。」
 
そう言うと男は厚手のコートの前を開いた。

腹にナイフが刺さっていて血で白いワイシャツが真っ赤になっていた。
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