正しい『玉の輿』の乗り方
そして、事業計画書を見せながら必死に訴えた。
『サクラール』さえ完成すれば、赤字はすぐにでも解消できる。何とか治験を行うための追加資金を融資して欲しいと。
すると、財前副頭取は条件つきなら数百億の融資に応じてもよいと言い出した。
条件は2つ。
1つは宮内製薬が早乙女コーポレーションからの出資を受け入れグループの傘下に入ること。
2つ目は俺に早乙女コーポレーションの社長令嬢と結婚しろというものだった。
『悪いが、うちもリスクを負う訳にはいかなくてね。だが早乙女グループの後ろ盾があれば話は別だ。君のところの株を早乙女コーポレーションに買ってもらいなさい。そうすれば、うちはいくらでも融資するから』
ふざけた条件だった。
出資を受ければ経営の主導権を早乙女グループに握られることになる。
それでも、『サクラール』の完成を待ち望んでいる患者のことを思えば、開発を途中で投げ出す訳にもいかなかった。
『サクラール』を完成させることは『ピネス』の被害者に対しての『贖罪』であり、宮内製薬が果たさねばならない『使命』でもあるからだ。
「少しだけお時間を下さい」
その夜、俺は緊急取締役会を開き、副頭取から出された条件を伝えた。色々な意見は出たものの、テレビ電話で参加した父を含め出席者の全員が、早乙女グループの傘下に入ることを承認した。
『サクラール』への思いは皆同じだったのだ。