正しい『玉の輿』の乗り方
3 再び現れた男
「すみませーん。こちらサクラ運送ですが」
お見合い騒動からちょうど一週間後の夜のこと。
何故かアパートに『こたつ』が届いた。
「いえ……頼んでないです。おとなりさんと間違えてませんか?」
私は両隣のチャイムを鳴らした。
けれど、どちらも留守。
そうこうしている間に古いこたつは持ち出され、6畳の部屋に立派なこたつがセットされていた。
「確かに綾野菜子様あてで間違いありませんので」
業者の人はそう言って帰ってしまった。
訳も分からずにポカンと『こたつ』を眺めていると、再び玄関のチャイムが鳴った。
今度は何!?
恐る恐るドアに近づくと、外から声が聞こえてきた。
「宮内だけど、早く開けてくんない?」
宮内!?
えっ……あの樹さん!?
「何で!?」
勢いよくドアを開けると、スーツ姿の樹さんが涼しげな顔で立っていた。
「何でって…。この間の件をちゃんと話し合おうと思って来てやったんだけど」
樹さんはそう言いながら、私を見てプッと笑った。
「それにしても、ずい分色気のない格好だな。ダルマが出てきたのかと思ったよ」
ジャージにセーターを重ね着し、更に赤いちゃんちゃんこを羽織った私にそんな言葉をかけて、樹さんはズカズカ中へと入ってくる。
そして、
「よし。こたつもちゃんと届いてるな」
樹さんはそう呟くと、当然のようにこたつの中へと入ったのだ。