正しい『玉の輿』の乗り方
「おまえな。男を部屋に上げてるんだから、潰れるまで飲むとか言うなよ。もっと危機感持て」
樹さんはそう言ってため息をつく。
「え……樹さんは私が潰れたら手を出すつもりなんですか?」
思わずそう問いかけると、思いきり眉間にシワを寄せられてしまった。
「は? おまえに手なんか出す訳ないだろ。大事な婚約者だっているのに」
「………………」
全力で否定する樹さんにちょっとイラッとする。
そして、こんなことでイチイチ傷ついてしまう自分にも腹が立った。
「なら、いいじゃないですか。別に私がどうなったって樹さんは私に手を出さないんだから」
突っかかるように言うと、樹さんは困ったような表情を浮かべた。
「いや、俺がどうこうの話じゃなく。酒弱い奴が無茶な飲み方するのは良くないだろ?」
「はいはい。分かりました。ちゃんと気をつけます」
私は強引に話を終わらせて、樹さんに背中を向けたのだった。