正しい『玉の輿』の乗り方
しばらく樹さんの前で泣いた後、私は飲みかけのビールを口にした。
もうすっかりぬるくなっていたけれど、飲んだら気持ちが落ち着くような気がして、今度は缶ビールのままグビグビと飲んだ。
『もうその辺にしとけ』と、樹さんにビールを取り上げられたような気もするけれど、そこでパタリと記憶が途絶えた。
そして、気づけばこたつの中で、樹さんと共に朝を迎えていた。
しかも、どういう訳か私は樹さんの腕に抱きしめられていて、視界いっぱいに樹さんの綺麗な顔があった。
どうなってるの、これ!
お互い服は着ているけれど、まるで恋人同士のような体勢にパニックになる。
「樹さん、すみません。起きて下さい、樹さん!」
必死に呼びかけると、樹さんがゆっくりと瞼を開いた。