正しい『玉の輿』の乗り方

「ああ……俺、あのまま寝ちゃったのか」

樹さんはあくびをしながらボソリと呟く。

「あの、樹さん。なぜ樹さんは私を抱きしめているのでしょう?」

恐る恐る問いかけると、樹さんは「ああ」と言いながら私を離し、衝撃のひと言を放った。

「おまえ、覚えてないんだ? 酔っぱらって俺に絡んできたこと」
 
「えっ!」

私はギョッとして固まる。

「えっと………私が樹さんに絡んだんですか!?」

「そうだよ。帰ろうとしたら怒って俺に抱きついてきたんだよ。泣いたり、笑ったり、とにかく忙しかったぞ。しかも、こたつの電気も勿体ないからって消しちゃうしな。こっちは寒くておまえを抱きしめるしかなかったんだよ」

「そ、そうでしたか。…………それは、すみませんでした」

自分の犯した失態にショックを受ける。

「まあ、俺だから良かったけど、あんなの何されても文句言えないからな? 今度から酒飲むときは気をつけろよ」

樹さんはシュンとする私の頭をワシャワシャと撫でると、こたつからムクリと起き上がった。


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