正しい『玉の輿』の乗り方
周りにいる女性達が急に騒がしくなった。
その視線は、たった今到着した4人の若い男性に向けられている。
「あいつらはIT系の社長だよ。雑誌やテレビにもよく出てるから顔くらい見たことあるだろ?」
樹さんが私に耳打ちする。
「いえ……最近忙しくて、テレビとかあまり見てないんですよね」
「ああ。壊れてるのか」
樹さんはひとり納得したように呟いた。
まあ図星なのでそこは敢えて否定せず、彼らの姿を目で追った。
みんなIT系の社長さんなのか。
ひときわ目立っているし、見るからに羽振りも良さそうだ。
きっと彼らなら、家族からの横槍もなく自分の意思で結婚を決められるだろうし、相手の家柄にもそれほど拘らないのかもしれない。
「あの、樹さん」
覚悟を決めて樹さんを見つめる。
「俺に紹介して欲しいのか?」
「はい。お願いできますか?」
「いいけど、あいつらの会社はベンチャー企業だから、その分リスクはあるぞ? 派手に企業買収なんかも繰り返してるみたいだし」
「それでもいいです。失敗した時は私も一緒に全てを背負いますから」
それなりの覚悟はちゃんとできている。
強い目で訴えると、樹さんが「分かったよ」と頷いた。