正しい『玉の輿』の乗り方

「それで? 菜子はいったいどいつが気に入ったんだよ?」

樹さんが早速尋ねてきた。
別にあの中の誰かを気に入った訳じゃない。
でも、どの人でもいいなんて答えるのも気が引けた。

「じゃあ、一番左にいる方を紹介して下さい」

何となく一番話しやすそうに見えたから。

「ああ、あいつはやめとけ。女グセが悪くて有名だから」

「そうなんですか。じゃあ、その隣の方をお願いします」

「あいつは男にしか興味ないっていう噂だけど」

「えっっ……じゃ、じゃあ、その隣の方を」

「あれは……筋金入りのマザコンらしいけどいいの?」

「うっ………じゃあ、右端の方を」

もう彼しか残っていなかった。
茶髪だし、ちょっとチャラそうに見えるけれど、もうそこは目を瞑ろう。

「ああ……ツーイーストの白崎社長か」

樹さんはそう呟いたあと、少し考え込んだ。

「分かったよ。よく調べておくから。問題がなければちゃんと紹介してやる」

「えっ、今日は紹介してくれないんですか?」

「あたりまえだろ。いきなり紹介なんかしない。ちゃんと相手の身辺を調査してからだ。悪いけど今日はここまでな。はい、お疲れ様」

樹さんの言葉で、この日の婚活は呆気なく終了となった。

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