正しい『玉の輿』の乗り方
「すみません、お口に合わなかったですか!? 自家製のドクダミ茶なんですけど」
「自家製のドクダミ茶?」
「はい。このアパートの裏にドクダミがたくさん生えるので、それを乾燥させてストックして毎日煎じて飲んでるんです。そうすればお茶代も浮くし、体にもすごくいいので一石二鳥………なんです……けど」
どうやらドクダミ茶は逆効果だったようだ。
樹さんは「そっか」と呟くと、そのまま黙り込んでしまった。
「あのさ………凄く偉いと思うよ。お嬢様なのにこんなに倹約した暮らしをしてて。でも……さすがにやり過ぎなんじゃないかな? お父様は君がこういう生活をしてること知ってるの? それとも、社長令嬢の君がここまでするのには何か理由でもあるの?」
「え………私が社長令嬢?」
もしかしてこれは嫌みを言われているのだろうか?
「別に、私だって好きでこんな暮らしをしてる訳じゃないです。実家が手狭なので仕方なく家を出ただけですから。それに私は社長令嬢なんかじゃありませんよ。確かに父は町工場を経営してますけど、自転車操業ですし借金だってありますし、ふけば吹き飛ぶような」
「は!? 町工場?」
樹さんがギョッとした顔で私を見る。
「冗談だよね?」
「いえ。冗談ではないです……けど」
「え?」
「え?」
何かがおかしいとお互い顔を見合わせた時だった。
私のガラ携と樹さんのスマホが同時に鳴り出した。