正しい『玉の輿』の乗り方
「あ…………君は確か…宮内製薬の副社長」
柳下部長は困惑した表情で固まった。
「ええ。あなたはあおば銀行の人事部長さんでしたっけ? そんな方が元部下にセクハラとは。奥さんや娘さんもさぞや悲しむでしょうね」
「い、いや…私は別にセクハラなんてしてないよ。君の見間違いだろう」
柳下部長は首を左右に振りながら、笑って誤魔化そうとする。
「惚けても無駄ですよ。さっきのやり取りは全て動画に収めてありますからね。過去にした彼女へのセクハラやその後の悪質な嫌がらせ。全部含めて、あなたにはそれなりの責任を取って頂きますから。どうぞ楽しみにしていて下さいね」
不適な笑みを浮かべる樹さんに、柳下部長の顔つきが強張った。
「分かった。いくら払えばいい?」
樹さんの腕にしがみつく柳下部長。
そんな彼のネクタイを掴み上げ、樹さんが恐ろしい顔で睨みつける。
「何でも金で解決できると思うなよ? いいか? 俺はどんなことをしてでもおまえを社会から抹殺してやるからな。よ~く覚えとけ」
樹さんはそう言って柳下部長を床へ振り落とした。
柳下部長は観念したのか、何も言わずに立ち上がると、青白い顔をしてそのまま消えてしまった。