クールな次期社長と愛されオフィス
「この私達秘書メンバーの中の誰かが、その本部長付秘書に一人選ばれるらしいわ」

目をキラキラさせているマリカ先輩を見つめ返した。

「それが?」

思わずそのキラキラに反応することなく返してしまった。

だって、そんなエリートかつ宇都宮財閥の次期社長候補の秘書なんて、考えただけで大変そうだもの。

マリカ先輩はきょとんとした顔で私を見た。

「アコは宇都宮湊付き秘書には興味ないの?」

「全然」

即答した。

「だって、大変そうですもん。そんなすごい人、気使っちゃってストレスたまりそう」

マリカ先輩は「ぷっ」と吹き出すとうつむいて笑った。

「アコはまだまだねぇ。玉の輿とか全く興味なさそう」

全くないし。

玉の輿なんて。

今まで出会ったお金持ちは価値観違いすぎてしんどい思いしかしたことない。

身分相応でいい。結婚相手なんて。

それに、まだ誰にも内緒だけど結婚よりも自分のカフェの夢を叶える方が先だって思ってるから。

「秘書の皆、集まって!これから海外事業新規開発本部長からの挨拶があります」

秘書室長が手を挙げて、そこら中に散らばっていた秘書達を呼んだ。

「いよいよね。どんなイケメンかしら?」

マリカ先輩は私の肩を自分の肩で押した。

イケメンねぇ。

本部長が新たに役員内に増えるってことは秘書の仕事もそれだけ煩雑になるってわけで。

そちらのうんざり感の方が強かった。

浮き足だった秘書達の真ん中に私もゆっくりと入っていった。



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