クールな次期社長と愛されオフィス
翌週の朝、本部室に入るとソファーに誰かが横たわっていた。

ソファーの横には大きなボストンバッグが無造作に置かれている。

一目で宇都宮部長だとわかった。

今日朝一の便でニューヨークから戻ってくるとは言ってたけど、まさかまさか一旦家には帰らず直接出勤したの??

恐る恐るソファーに寝そべっている部長の顔を確認する。

間違いない。

部長は片腕で目元を覆うようにして普段絶対見せないような無防備な姿で寝ていた。

こんな時もあるんだ。

いつも隙がない部長に見慣れている私にはとても新鮮だった。

それにしても無駄のないきれいな顔。

思わず、見入っていたその時。

部長の腕がぐらっと動き隠れていた目元が現れた。

長い睫が僅かに震える。

「・・・ん」

部長の表情がゆがみ、その目がうっすらと開く。

わ、起きる!

私は慌てて、その場から離れて自分のデスクに戻った。

なんだかドキドキしてる。

部長はゆっくりとソファーから上体を起こした。

そして、少し乱れた髪を掻き上げながら私の方に顔を向けてかすれた声で言った。

「おはよう」

「お、おはようございます」

何動揺してんだろう。

寝起きの部長が妙に男の色気を漂わせていて見慣れない私はどう反応していいかわからなかった。

ドキドキよ、早く止まれ!

部長の顔を見ないようにしてデスクの書類を整理する。

「今朝空港からそのまま来たよ。業者からの急ぎのメールがあるって聞いてたから」

「そうなんですね。それはお疲れさまです」

なんか変な日本語だと思いつつ、書類の束を部長のデスクに持って行った。

「メールに添付されていた案件をプリントアウトしておきました。あと、部長宛の郵便物置いときます」

「ああ、ありがとう」

部長はそう言うとゆっくりと立ち上がり、ネクタイを緩めながらデスクに向かった。





< 21 / 120 >

この作品をシェア

pagetop