クールな次期社長と愛されオフィス
そしてそんな寂しげな部長に思わず寄り添ってしまいたい衝動にかられて慌てて自分の気持ちを引き留める。

「だから俺は自分が信じられる限られた相手には誠意を持って付き合いたいと思ってる」

部長はそう言うと、足を止めて私の方に視線を向けた。

「堂島はどう思ってるかわからないが、俺はお前を信じられる」

「え」

そんな風に熱い眼差しで見つめられたら、私どうしたらいい?

一気に顔が熱くなって胸の鼓動が激しくなる。

私なんて、そんな部長みたいなすごい人から信頼されるほどの人間じゃないのに。

その眼差しに堪えられなくなってうつむいて小さく呟いた。

「・・・私、そんな大した人間じゃないです。なのに、いつもこんなに親切にして頂いて、本当に恐縮しています」

「俺だってお前に日々感謝している。だから今日、ささやかな感謝の気持ちをこめてここにつれて来た。俺の知り合いでこの場所につれてきたのは堂島、お前だけなんだぞ」

部長はそう言うと少しはにかんで私の頭を軽くポンポンと叩いた。

この場所につれてきたのは私が初めて?そんなこと信じられない。

部長の背中を見つめながら、ドキドキが加速度を増す。

どうしよう。

本当に、本当に好きになってしまうよ。

部長はただ、私を信頼してくれてるってだけだから、好きになったら自分が傷付くことになるのに。

そう思ったら目の奧がじわーっと熱くなってきた。

だめだ、こんなところで泣いちゃ。

慌てて手の甲で溢れそうになった涙を拭った。







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