クールな次期社長と愛されオフィス
家につくと、湊は私の手をとったままソファーに腰をかけた。

そして、私の体を自分の胸に引き寄せる。

「今日ほど気持ちが高ぶったことはなかった。俺の夢への一歩を踏み出したような出来事だよ」

「うん、そうですね。『ニューヨーク・ニュース』のインタビューなんてすごすぎます」

湊の胸の鼓動はいつもより速いような気がした。

「店舗に置く商品に日本のブレンドティについても触れるから、アコも気合いれて臨めよ」

「えー、それにはまだ触れないで下さい。プレッシャーきついです」

私は湊の顔を見上げて苦笑する。

「人間は少々のプレッシャーがある方がいい成果を生むもんだ」

そう言って湊はいつものように意地悪な表情を作ると、そのまま私の顎を持ち上げた。

「心配するな。俺がいる」

そのまま唇を塞がれた。

ソファーの上に押し倒され、いつもよりも激しく求められる。

お互い夜遅くて疲れているはずなのに。

いくら求め合っても足りないくらいだった。

今日はどうしてこんなにも気持ちが高ぶるんだろう。

湊の仕事が夢への一歩を踏み出したから?

それとも。


外で何かが光った。

と同時に大きな雷鳴が部屋の中に響き渡る。

私の鎖骨に押し当てられた湊の唇が離れ、窓の外に目を向けた。

「雷か」

この時期には珍しい落雷に、なぜだか心が締め付けられるような不安に襲われる。

「雷も俺達に嫉妬してるか?」

湊は微かに笑うとざわつく胸を押さえる私に気付かないまま再び唇を塞いだ。

抱き合っている間、何度も遠くで雷が鳴っていた。


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