クールな次期社長と愛されオフィス
とにかく私とのことは何があっても外に漏れないようにしなくちゃならない。

今のところ、マリカ先輩も気付いていないみたいだ。

こんなに近くにいるマリカ先輩にばれてないのなら大丈夫かもしれない。

先輩がおいしそうにとんかつを頬ばる姿を見ながら無理矢理自分を安心させようとしていた。

すると、マリカ先輩が急に私の顔を真剣な眼で見上げた。

「最近、アコきれいになったけど、何かいいことでもあった?」

こういうとき、平静を装おうと思えば思うほど顔が熱くなる。

マリカ先輩はすかさずニヤッと笑って続けた。

「彼氏できたとか?」

「そんなことあるわけないですよ。毎日忙しいし、そんな余裕も出会いもないですって」

「一番近くにいるじゃない。素敵なお相手が」

マリカ先輩は尚もしつこく食い下がる。

そして、私の耳元に顔を近づけると小さな声で言った。

「宇都宮部長」

胸がドキドキしてきた。

顔もますます熱くなる。

「そ、そんなことあるわけないじゃないですか!」

思わず声がうわずる。

「うわ、顔がまっ赤よ。怪しいなぁ」

冷やかすマリカ先輩を前に私は両手で頬を押さえた。

自分で、そんなことやりながら余計怪しいじゃないと心の中で突っ込む。

「まぁあれだけ素敵な上司だもんねぇ。好きになるのも無理はないわよ」

「ち、違うって」

私はマリカ先輩の腕を押しやりながら口をとがらせた。
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