クールな次期社長と愛されオフィス
まさかまさか、本当にばれてないよね?

ドキドキしながらマリカ先輩の方を見ると、私を詮索するような視線を向けていた。

「もし、部長と付き合うようなことがあるとしたら、社長に見付からないよう気をつけなさいよ。アコ自体もやばい状況になるかもしれないから」

え?

私自身も?

思わず、マリカ先輩の真意を探ろうとその目を見つめ返した。

途端、マリカ先輩の目元が緩み、プーッと吹き出した。

「なぁんてね。そんなおとぎ話みたいな恋愛、アコがしてるわけないかぁ」

「も、もう!マリカ先輩、ひどーい!」

「あはは、でも、アコだってまんざらでもないような顔してたじゃない。ちょっと想像して楽しくなったでしょ?」

ケタケタ笑うマリカ先輩を見ながら胸をなで下ろす。

妙に額に掻いた汗をハンカチで拭いながら苦笑した。

さっきの話が冗談だったとしても、もし本当に社長にばれたら恐ろしいことになるのは間違いない。

社長の切れ長の冷淡な目を思い出して背筋がぞくっとする。

昼休みから戻ると、秘書室長が慌てた様子で私達に走り寄ってきた。

「えーっと、君、堂島さん、すぐ社長室へ行って。さっきから社長がお待ちだ」

「社長が?」

マリカ先輩と顔を合わせると、先輩はきょとんとした顔で首を傾げた。

何だろう。

急に胸がざわつく。まるであの雷の音を聞いた時みたいに。

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