クールな次期社長と愛されオフィス
「君は上司である湊と同居しているらしいじゃないか。こんなことがもし社内に知れ渡ったらどうなるかわかるだろう?会社、いやそれだけでなく宇都宮家の信頼も損なうことになりかねない。秘書として自覚はあるのかね?」

社長の言葉をただ呆然と人ごとのように聞いていた。

私の思考回路は完全にストップしている。

「君が副業していること、そして同居していることは、全て湊は認めているんだろう?そうでなきゃ、今ここにいられるはずがない。職権乱用とは正にこのことだ。湊は上司という立場を利用して一体何を考えてるんだ。今や社運をかけた新規事業のトップであるという自覚がなさすぎる。それに、君も湊に弄ばれてるとは気付かなかったのか?湊が君みたいな女を本気で相手にするなんてあるはずがないだろう?」

そう言いながら社長は鼻で笑った。

湊が私を弄んでいる?

最初はそうかもしれないって思ってたけど、今はそんなことないって信じている。

そんなはずはない。

あんなにもいつも大事に愛してくれているんだもの。

震える手をぎゅっと抑えた。

「この事実を知ってしまったからには、社長の立場としてこのことを放っておくわけにはいかない。秘書経験の長い君ならわかるね?」

私はだまったままデスクの上に置かれたティーポットをただ見つめるしかなかった。

「この事実を湊が黙認していたと認め、その責任を取って新規事業から自ら外れると俺に一筆書くよう君が湊を説き伏せることができれば、秘書の席は置いといてやろう。君も今更会社を追い出されてもどこへも行く当てはないだろうから」

「そんな・・・」

思わずそう言いながら、乞うような目で社長の顔を見上げた。

「ふん、きっとそんな目をして湊をたぶらかしたんだろうねぇ。君もいい大人だ。いい大人が自分のやったことの落とし前をつけるのは当然のことでもある」

そう言うと、社長は立ち上がり、私のそばにやってきた。

そして、私の顎をくっと持ち上げいやらしい目つきで見つめる。

「俺の愛人になるなら、全て免除してやってもいいがな」

そのまま社長の顔が近づいてくる。

目をぎゅっとつむり、口を固く結んだ。

だけど、そんなの嫌だ。

思わず私と社長の胸の間に手を入れ、向こうへぐっと押した。

社長はくっと笑うと、私を見下ろして言った。

「社長の愛人なんて、なかなかなれない、優遇ポジションだと思うがな。まぁいい。返事の期限は1週間だ。よく考えるんだな」





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