クールな次期社長と愛されオフィス
「あきらめなければ、きっと解決の糸口は見付かるはずだわ。それに向かう道は一つじゃない。私はアコさんなら必ず素敵なカフェが持てると信じてるわ」

少しずつ自分の中に光が差していくようだった。

私は友江さんの言葉を受けて、彼女の目をしっかりと見つめながら頷いた。

「そうですね。あきらめなければきっと解決の糸口は見付かるはずですよね」

「そうよ。あきらめない気持ちがきっとその願いを叶える道筋を照らしてくれるの。何かに迷った時はいつでも連絡ちょうだい。私でよければ相談にのるから」

「ありがとうございます」

友江さんの強い意志を秘めた瞳をじっと見つめた。

その後は、仕事以外の話題で和やかな時間を楽しむ。

友江さんには5つ年上の彼氏がいるらしい。

訳あって結婚はしていないけれど、それぞれが夢に向かって突き進んでいく中で必要な存在だそうだ。

彼の話をする時の友江さんは、普段の気丈で凛々しい感じではなく、少し頬を染めなる一人の可憐な女性に見えた。

「愛する人がいると自分のエネルギーが倍増するような気がするの」

その話を聞きながら私もまさにそうだと思い頷く。

湊と出会って、湊の愛を受けながら、自分の夢が明確になっていった。

自分が何をすべきで何が必要なのかがようやくわかってきた感じ。

でも、それは湊でなくてはならなかったし、湊だったから今の私に到達した。

「アコさんも恋をしているみたいね」

友江さんはほおづえをつきながら楽しげに笑う。

「今度会う時は、アコさんのカフェの具体的な話が聞けるのを楽しみにしているわ」

別れ際、そう言って私をぎゅっと抱きしめてくれた。

きゃしゃな体だけどとても熱くて、ほんのりカモミールのさわやかな香りがした。

この出会いもよく考えたら湊が引き合わせてくれたもの。

湊のそばを離れていくことは辛いけれど、湊を守るためにら今はそうするしかない。

だけど、いつかきっとメビウスの輪のようにどこかで繋がっていると信じよう。

そのためにも、私は夢をあきらめちゃだめなんだ。

友江さんの後ろ姿に手を振りながら、新たな決意が内からこみ上げてくるのを感じていた。

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