秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。
最上さんも運転席に乗り、エンジンと暖房を付けた。
だが暖房もすぐには効かず、車の中は外よりも寒くて思わず身を震わせると、それに気づいた最上さんが後部座席からブランケットを取って手渡してくれた。
「けっこう寒いですよね」
「ありがとうございます。あの、タメ口で結構です。私の方が5つも下ですし、逆にそうして下さらないと私が嫌です」
「でも‥」
「お願いします」
「わかった。じゃあ敬語やめるよ」
頷きながらブランケットを受け取り、少し戸惑いながらも膝にかける。
色的に女性物だ。
当たり前だ。いつもここには秘書である九条さんが乗っていてもおかしくない。
なんだか二人だけの領域に踏み込んでしまったみたいで、申し訳ないようななんとも言えないような気持ちになる。
「家、どこか聞いていい?」
「あ‥はい」
そう言われ、近くの店やマンションを挙げ、どうにか家を伝える。
小さな頃からいつも家の誰かに送り迎えをしてもらうのが当たり前で、誰かの車で家まで送ってもらうなんて事はほとんど無く、こういう説明は慣れていない。
結局しどろもどろになってしまったが、
それでも最上さんには伝わったらしく、
「分かった」と言って頷かれて車は走り出した。